≪くらげだってそっくりだ≫

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■ゆめの話

ゆめのなかで君に会えました。

ゆめのなかで君に触れました。

ゆめのなかのあなたの皮膚は現実と同じでとてもすべらかでなめした革のようで、でもそれは現実とはまた違って特別に親密で、また温度がなく、やわらかで、幻のようでした。でも私とあなたはただ黙って互いの手に触れていました。ただそっと手を重ねていました。

ゆめのなかで会えるなら、夢の中で会えるのなら、もっとそれ以上のことをすればいいのにと、手を触れ合う以上のことをできればいいのにと私はいつも夢から目覚めて思うのですが、しかし同時に、これがあるべき姿なのだとも思うのです。腕を触れ合わせ、肩を触れ合わせ……それだけなのです。そこまでです。

その空間をずっとわたしは覚えています。ただ、顔の見えないあなたと(ゆめのなかではいつも、人物の顔のイメージというものがとても稀薄になります。確かにあの人だ、その人であると私には分かるのですがしかしゆめのなかでその人らの顔は見えていないのです。顔を見ている体をして、わたしは何も見ていないのです。ただその人らの表情や手触りや人柄だけを覚えてわたしはゆめから帰ってきます。)静かに向かい合って座り……。

ゆめのなかではいつも、わたしとあなたは顔を合わせ、とても壊れやすく、ほそいほそい綿の糸のような、やわらかい空気のなかで座っています。それはある意味、現実で感じる孤独の感覚とよく似ています。心地よく、静かで、親密な、仄明るい孤独の空気です。その薄明るい、ぼうっとかすんだ白い空間のなかであなたとわたしはただ手の平を触れ合わせています。二人でいるはずのその感覚が、どうして現実での孤独で感じる心持ちに近いのか、それは不思議ですが、わたしはたいていの夢の中でいつもその孤独を感じ、またそれがこの世で最も上質な幸せなのです。二人で指を触れ合わす孤独、その幸せを私はわすれません。しかし……しかし、この感情は、現実のあなたとはまったく乖離した感情です。それを現実のあなたはどう思うでしょうね。

 

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 15分で書く小説のようなもの。小説なんだかなんだかわかんないけど、こんな文章を書くとき私はとても安らぎます。