≪くらげだってそっくりだ≫

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f:id:into1the2sea3:20130907190040j:plainジャクソンポロック - Bing 画像

ポロック 2人だけのアトリエ』という映画を見たい。

というのも、わたしにはすごく大好きな本があって、それは『絵本をつくる』という、五味太郎さんというおじちゃんの書いた本です、その人は、絵本作家です、たとえば「金魚がにげた」とか「きいろいのはちょうちょ」とか私はちいさい頃に読んだ覚えがあるんだけれども、その人が何十冊も何百冊も絵本を出している中で、『絵本をつくる』という本は、めずらしく文章の本で、その中でその五味太郎さんがこういうことを言っていた。

「ジャクソンポロックはすごいよ。ジャクソンポロックほど、画材と作家の方向性が一致している人はいないよ。」

だいたいこんな感じのことを。で、わたしは、この、五味太郎さんの「絵本をつくる」という本を何度も何度も読んでいるんだけれど(わたしは、本は一度読んだら読みっぱなしで、よほど何度も読み返すということをすることがないんだけれども、この本だけは特別に何度も読んでいる。)、そのたびにこのフレーズが、なんとなく頭のなかでぱっと鮮やかに印象付けられていく。その本を開いて、読んでいって、その行に行き着くたびにぽっ、と頭の中で音がする。わたしは、ジャクソンポロックって人がなんなのか、ぜんぜん知らない。彼、絵をかいてるの、ふうん、どんな絵だろうね、この五味太郎さんがすごいっていうんだから、すごいんだろうか、うつくしいんだろうか、それともかわいいのか、どんな絵なんだろうね、なんてことを一瞬思うだけ、それだけなんだけれども。いやしかし、「ジャクソンポロックはすごいよ。」という一言のリズムとか、音のはずみ方とか、五味太郎さんのこの一文は、すごくすてきだと思う、ただ、それだけが、たまーにふっと頭のなかではぜたりして。で、この「絵本をつくる」という本に出合ったのは実に中学3年生の頃で、その中学校の図書館はけっこうきれいでべっこう色のきれいなフローリングで照明もまっしろできらきらしていたんだけれども、そのとき、わたしは美術部に入っていて、そこで、夏休みの読書感想画をえんえんかいていたわけだ、水彩絵の具で何日も何日も、それで、ある日、休み時間に、その本をみつけた。「絵本をつくる 五味太郎」その本は棚に3冊も並んでいた、なんだか、題字がすてきだった、それから、表紙の質感がなんとなく良かった、そして何より、若干夢見がちだったあの頃のわたしには「絵本」を「つくる」という言葉は、すごくすてきに映ったのである。絵本をつくる、絵本作家、それってすてきだ、そうやって食べていけたらどれだけいいだろう、いや、それで食べていくのは難しいにしろ、将来結婚をして、旦那にちょっと稼いでもらって、自分は、絵本をつくって、あるいは、挿絵とか漫画とか小説だとか、そういうものをかいて、そうやって細々と暮らしていけたらどんなに幸せだろうって、その頃はけっこう本気で夢見ていた。とにかく、その本は、なんだかとってもしっくりときて、そのときのわたしは、ちょっと本の中を見ただけで、もう、興味を惹かれてならなかった、とてもすてきだった。だから、私はその本を、すっと棚から持ち上げて、さっと立ち上がって、そのまま、くるりとうしろをむいて机に戻って、かばんに、本をぽーんと入れて、そのまま、その日は家にかえった。つまり、盗んだ。それほど、その本はとても魅力的だった。

それから、もう4年くらい経つわけだけれども、その本は今でもたまに読み返す。むかしは、一か月に一回くらいよみかえしていた。いまは、半年にいっかいくらい結局読んでしまう。すごくしっくりきている。なにがそんなにしっくりきているかというと、五味太郎さんの、彼の、しゃべり方とか、ものの感じかたとか、せいかくとか、さらっと、すっと、気持ちがよくて、たのしくて、チャーミングで、ユーモアがあって、また、そのユーモアの後ろには膨大な量の知識たちがうごめいているんだけれども、しかし、本人はそんなことおくびにも出さないで、いま、ぽっとでたんだよ、というような顔してさ、江戸前なのさ。っていう、このいさぎよさが、とてもすてきなんだ、五味太郎さんは。すてきなんだ。そういうわけで、つまり、この本を中学の図書室から盗んだことはそりゃ、悪いことなんだろうけれども、だめだろうか、これでは私だけが幸せすぎるんだろうか。

とにかく、ジャクソンポロック。ジャクソンポロックのはなしに戻ると、つまりわたしは今まで、ジャクソンポロックという人のことについては、その五味太郎さんの「絵本をつくる」という本の中の一文で見たことがあるだけで、あとはぜーんぜん何も知らなかった、だけれども、今日、今日たまたま、朝起きて、ごはんを食べて、本を読んで、部屋を掃除して、きれいになった床の上で、フリーマーケットでお母さんがもらってきた小学校のちいさな鉄パイプと木でできた椅子にすわりながら、部屋の水槽で飼っているペットのオレンジザリガニくんが餌を食べるところをじっと見ているときに、ふと、わたしは、「ジャクソンポロック」という言葉を思い出して、そうだ、どんな絵を書く人なのか、ずっと知りたかったんだよなと思って、調べてみたんだ。4年越しに。

そうしたら、この記事の一番上にのっけた絵がでてきた。あ、と思った。すてきじゃないか。それから、ネットの画像検索の窓をぽちぽちとみると、これ、こんな写真がでてきた。

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ジャクソンポロック - Bing 画像

あー。と思った、これ、小学生の頃の図画工作の教科書に載っていたよ。覚えている。白黒写真。外人さんが床一面のキャンバスにえのぐを飛び散らせている。それで、そのページを開いて、先生が、さあ今日は、こんな絵をかきましょう。だなんて、そんな授業があったことを覚えている。彼だ、彼がジャクソンポロック、ジャクソンポロックさんだったんだと思って、やけに今日はうれしくなった。それになにより、絵がいい、さすが、すごく良い絵だなーと思った。こんな絵の具のびしばしだけなのに、どうして人は、この絵はいいねだの悪いねだのとうんぬん言うんだろうな。不思議だ。